採用活動において、候補者の情報を正確に把握することは、採用リスクを回避し、信頼できる人材を確保するために欠かせません。
しかし、バックグラウンドチェックを導入しようとする際、次のような疑問を抱える人事担当者も多いのではないでしょうか。
- どのタイミングで実施すべきか?
- 内定後に行ってもいいのか?
- 調査にはどのくらいの時間がかかるのか?
- 自社で行うべきか、それとも調査会社に依頼するべきか?
最適なタイミングでバックグラウンドチェックを行わないと、採用プロセスに支障をきたし、結果的に採用リスクを増大させる恐れがあります。
この記事では、バックグラウンドチェックの重要な調査項目や所要期間、実施の流れを詳しく解説します。また、自社実施と調査会社依頼の比較を通じて、それぞれのメリット・デメリットを整理し、トラブルを防ぐための具体的なリスク回避ポイントもご紹介します。
目次
バックグラウンドチェックで調査すべき重要な項目

バックグラウンドチェックでは、以下の項目を調査することが重要です。
- 学歴 : 学位や卒業証明書の正確性を確認
- 職歴 : 勤務先や職務内容、雇用形態に虚偽がないか調査
- 勤務態度 : 勤怠状況や同僚との協調性を確認
- 犯罪歴 : 候補者の過去の犯罪経歴を調査
- 破産歴 : 破産記録の有無を確認
- 民事訴訟歴 : 公的な裁判記録を調査
- 反社チェック : 反社会的勢力と関係を持っていないか確認
これらの調査を実施することで、採用の透明性を高め、潜在的なリスクを未然に防ぐことができます。
なお、バックグラウンドチェックの目的は、経歴詐称や就業上の問題がないかを確認することです。
一方、リファレンスチェックは、候補者の仕事ぶりや価値観、人柄など、履歴書や面接だけでは見抜けない、候補者の人となりを目的として実施しています。
前職の実績を確認するリファレンスチェック
上述したように、リファレンスチェックは、候補者の職務経験や勤務態度を、第三者から確認する調査方法です。
候補者の承諾を得た上で、過去の同僚や上司などに接触し、以下のような点を調査します。
- 勤務態度 : 遅刻や早退の有無、勤怠状況を確認
- 人柄とコミュニケーション能力 : 同僚やチームメンバーとの関係性・協調性を評価
- リーダーシップ : プロジェクトや業務での主導力や責任感の程度を把握
- 実績の具体例 : 過去に担当したプロジェクトの具体的なエピソードを確認
- 課題への対応力 : 業務上の困難やトラブルにどのように対処したかを確認
- 適応力 : 異なる環境や新しい役割への適応力を聞き、柔軟性や学習意欲を確認
リファレンスチェックは、面接や履歴書では確認しきれない、実績や人物像を補完するために欠かせないプロセスです。また、候補者の信用を第三者から得ることで、採用の透明性を高められます。
反社チェックや学歴の信頼性を確認
バックグラウンドチェックでは、特に反社会的勢力との関係や学歴の信頼性を確認することが重要です。これらは企業の信用を守る上で不可欠な要素であり、採用ミスマッチやリスクを未然に防ぐために、慎重かつ適切な調査が求められます。
反社チェック
候補者が反社会的勢力と関係を持っていないか確認することで、企業の信用リスクを防ぎます。主な調査方法は以下の通りです。
- インターネット検索 : 名前や過去の報道記事を確認
- 反社チェックツールの利用 : 専門的なデータベースでの調査
- 調査会社の活用 : 調査をプロに依頼
学歴や資格の確認
履歴書や応募書類に記載された学歴や資格が、正確であるかを確認します。
- 学校の卒業証明書や資格証明書を直接確認する
- 必要に応じて学校や機関に問い合わせを行う
これらの調査を適切に行うことで、採用ミスマッチを防ぎ、企業の信用を守ることができます。また、候補者との信頼関係を構築するためにも、事前に調査の意図を共有し、同意を得ることが重要です。
バックグラウンドチェックを自社で行った場合の所要期間
自社でバックグラウンドチェックを行う場合、調査内容や社内リソースの状況により所要期間は異なりますが、一般的には数日から最大1ヶ月ほどかかることがあります。
調査の流れ
バックグラウンドチェックを自社で調査する場合、以下の流れで進めるのが一般的です。
- 1.候補者から同意を取得
- 2.必要書類の提出依頼
- 3.インターネット調査
- 4.前職の企業への問い合わせ
- 5.調査結果の確認と分析
それぞれ解説します。
1.候補者から同意を取得
調査を開始する前に、候補者から正式な同意を得ます。同意を得ないまま調査を行うと、プライバシーの侵害や法令違反となる可能性があります。
2.必要書類の提出依頼
候補者に卒業証明書・資格証明書・在籍証明書・退職証明書などを提出してもらいます。
3.インターネット調査
候補者のSNSや公開情報をチェックします。基本的な経歴や行動履歴を確認ができます。
4.前職の企業への問い合わせ
必要に応じて、候補者の前職に連絡を取り、在籍状況や勤務態度についてヒアリングを行います。ただし、これには候補者の追加同意が必要です。
5.調査結果の確認と分析
集めた情報をもとに、候補者の経歴や適性を確認します。
所要時間
調査にかかる時間は、以下の通りで調査内容や規模に依存します。
調査期間は以下の通り、内容や規模によって異なります。
インターネット調査やSNS確認
SNSで個人が公式として使っているアカウントの場合、1〜2日程度で完了する場合が多いです。これは主に社内リソースを活用して簡易的に行えるためです。
一方、候補者がプライベートで使用している裏アカウントや、匿名性の高い情報を調査する場合は、特定や内容確認に時間がかかることがあり、数日から1週間以上を要することもあります。このため、目的や対象範囲に応じた計画的な対応が必要です。
学歴や職歴の確認
書類の確認は数日で済むことが多いです。前職へのヒアリングを行う場合、調査期間は2~3週間に延びることがあります。連絡の取りづらさや企業の協力状況により、時間がかかることもあります。
全体的な所要期間
調査内容が限定的であれば1週間以内に終わることもあります。詳細なチェックが必要な場合は最大1ヶ月程度かかるケースもあります。
自社でバックグラウンドチェックを行う場合、適切な手順とリソースを整えることで効率的に実施できます。しかし、時間や労力の負担が大きいため、調査会社への依頼も検討することをお勧めします。
バックグラウンドチェックを調査会社に依頼した場合の所要期間
調査会社にバックグラウンドチェックを依頼すると、数日から1週間程度で調査が完了します。専門的な調査が可能で、採用プロセスのスムーズな進行が期待できます。
ただし、依頼先や調査内容によって期間は前後するため、事前の調整が重要です。
調査の流れ
バックグラウンドチェック調査の流れは、以下の通りです。
- 1.候補者の同意取得
- 2.調査会社への依頼
- 3.調査実施
- 4.結果報告書の受領
それぞれ解説します。
1.候補者の同意取得
候補者に調査の目的や内容を説明し、書面または口頭で同意を得ます。同意は個人情報保護法の観点から必要であり、トラブル防止にもつながります。
2.調査会社への依頼
調査会社に候補者の情報を提供し、調査項目や方法を具体的に決定します。調査の範囲や内容に応じて、詳細なすり合わせを行うことがポイントです。
3.調査実施
調査会社が学歴・職歴・犯罪歴・反社会的勢力との関係性などを確認します。この際、公開情報や専用データベースが活用され、正確かつ客観的なデータが収集されます。
4.結果報告書の受領
調査の結果は、詳細なレポートとして提出されます。リスクが特定された場合、内容を精査し、採用判断に反映させます。
所要時間
調査期間は調査項目や会社によって異なりますが、以下が一般的な例です。
- 短期間(2~3日): 簡易な確認(学歴や職歴の基本情報)を実施する場合
- 通常(5~7日): 犯罪歴や反社会的勢力との関係など、包括的な調査を行う場合
調査範囲が広がるほど、所要時間が長くなる傾向があります。また、候補者が海外で活動していた場合や、特定の情報が得られにくい場合は、さらに時間を要することがあります。
バックグラウンドチェックを円滑に進めるためには、候補者との信頼関係の構築が不可欠です。候補者が調査に不安を感じる場合、協力を得られなかったり、調査そのものを拒否される可能性があります。
特に個人情報を扱うプロセスであるため、目的や調査内容を丁寧に説明し、候補者に安心感を与えることが重要です。信頼関係を築くことで、候補者は調査に対して前向きな姿勢を示し、スムーズな進行が可能になります。
また、信頼関係の欠如は、採用後の関係性にも影響を及ぼす可能性があるため、調査段階での透明性を確保することが企業にとっても重要なポイントとなります。
バックグラウンドチェックは採用の透明性を向上させる有力なツールであり、慎重に計画・実施することで、より良い採用決定につなげることができます。
バックグラウンドチェックは内定後ではなく内定前にしよう

バックグラウンドチェックを実施する最適なタイミングは、内定前です。このタイミングで実施することで、費用対効果を高めつつ、採用プロセス全体のリスクを最小限に抑えることができます。
また調査会社を利用した場合、調査には一般的に1週間程度かかります。そのため最終面接から内定を出すまでに2週間ほどの期間を確保するのが理想的です。
この期間を設定することで、十分な時間をかけて調査結果を精査し、慎重に採用判断を下せるようになります。タイミングを適切に計画することで、採用の透明性を向上させ、候補者にも安心感を与えることができるでしょう。
内定前にチェックを行うことで、候補者の詳細な情報を正確に把握し、不適切な採用によるトラブルを未然に防ぐことが可能です。
内定後や入社後の実施にはリスクがある
内定後や入社後にバックグラウンドチェックを行うことも可能ですが、いくつかのリスクが伴います。
内定後に問題が発覚した場合でも、内定取り消しを実行するには合理的で客観的な根拠が求められます。また、入社後に問題が判明した場合、労働契約が既に成立しているため、解雇はさらに困難です。
裁判所は解雇の妥当性に厳しい基準を設けており、重大な経歴詐称でなければ解雇は難しいとされています。
内定前に実施するメリット
内定前にバックグラウンドチェックを行うことは、以下のメリットがあります。
- コスト管理が容易 : 選考が進んだ候補者のみに絞ることで無駄な調査費用を防ぐ
- 採用トラブルを回避 : 候補者の経歴を正確に確認することで内定取り消しのリスクを軽減
- 選考プロセスの改善 : 最終面接時に正確な情報を基に候補者を評価できる
バックグラウンドチェックは、上述したように、最終面接から内定を出すまでに2週間ほどの期間を確保するのが理想的です。このタイミングなら、選考辞退のリスクを抑えつつ、問題が発覚した場合の対処も容易です。
特に、調査内容が内定後の採用方針に大きく影響を与える場合は、事前に結果を把握することが重要です。採用の透明性を高めるためにも、タイミングを見極めた計画的なチェックが求められます。
調査会社に依頼した場合と自社実施の比較

バックグラウンドチェックの方法には、調査会社への依頼と自社実施の2つの選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自社の採用方針に合った方法を選択することが重要です。
調査会社を利用するメリット
調査会社を利用するメリットは次の通りです。
- 高度な専門性
- 効率的なプロセス
- 採用リスクの低減
- カスタマイズ可能な調査
- 法令遵守のサポート
高度な専門性
反社会的勢力との関係、過去の金銭トラブル、法律違反の有無など、企業では実施が難しい分野の調査を得意としています。専門知識に基づいた正確な情報が得られます。
効率的なプロセス
採用プロセス全体を円滑に進めることができ、採用担当者の負担を大幅に軽減します。調査会社のネットワークやリソースを活用することで、短期間で必要な情報を収集可能です。
採用リスクの低減
調査会社を利用することで、事実と異なる経歴や重大なリスク要因を持つ応募者を見極める精度が高まります。採用ミスを防ぎ、将来的なトラブルを未然に回避できます。
カスタマイズ可能な調査
企業のニーズに応じて調査内容を柔軟にカスタマイズできます。例えば、特定の業界に関連するリスクや特別なスクリーニング項目を追加することも可能です。
法令遵守のサポート
個人情報保護法・職業安定法に準拠した調査方法を採用しているため、法的リスクを軽減できます。特に初めて実施する企業にとっては、安心して任せられるメリットがあります。
調査会社を利用するデメリット
一方調査会社を利用するデメリットは、次の通りです。
- コストが発生する
- 情報の適正管理の確認が必要
- 信頼関係への影響
コストが発生する
外部サービスの利用には一定の費用がかかります。特に採用人数が多い企業ではコストが課題になるでしょう。
情報の適正管理の確認が必要
委託先が適切に情報を管理しているか確認する手間が発生します。
情報セキュリティ対策としてISO27001認証を取得している会社だと安心でしょう。
信頼関係への影響
応募者によっては、外部への情報提供に対する不安を抱く可能性があります。信頼関係を損なわないよう、事前の説明や同意取得が不可欠です。
自社で実施する場合の注意点
自社でバックグラウンドチェックを実施する場合の注意点は、以下の通りです。
法的遵守が必須
候補者から明確な同意を得ることが重要です。調査範囲や目的を具体的に説明し、プライバシー侵害のリスクを避ける必要があります。
調査範囲の制約
学歴や職歴確認など、比較的簡易な調査に限定されます。専門的な調査には知識が必要であり、対応が難しい場合があります。
負担の増加
担当者に新たな業務が発生するため、採用プロセスが遅れる可能性があります。また、ノウハウの蓄積や調査スキルの向上には時間がかかるでしょう。
候補者の拒否リスク
候補者が調査を拒否する場合、その理由を慎重に見極める必要があります。虚偽申告の可能性が高い場合は、選考から外す判断も必要です。
上記を踏まえて、自社の状況や採用人数に応じ、最適な方法を選択することが重要です。
トラブルを防ぐためのリスク回避ポイント

バックグラウンドチェックを実施する際は、候補者からの同意取得や法令遵守が重要です。適切なプロセスを踏むことで、法的リスクを避けつつ、採用の透明性を確保できます。
法的リスクの回避と調査の透明性を確保する方法
調査を進める中で、法的トラブルを避けるための基本ルールを守りましょう。特に個人情報保護法を遵守しつつ、調査内容の透明性を確保することが求められます。
法令に基づく範囲での調査
個人情報保護法の下では、対象となる情報は学歴・職歴・資格・反社会的勢力との関わりの有無などに限られます。候補者のプライバシーに配慮した調査を徹底する。
調査会社の選定に注意
調査会社を利用する場合は、その実績や法令遵守の姿勢を確認します。調査会社の不適切な行為が企業責任となるケースもあるため、委託管理の徹底が必要です。
調査結果の取扱いに注意する
調査結果は必要最低限の範囲で共有し、内部で厳重に管理します。また、不採用の理由を説明する際は、調査結果のみを根拠としないようにします。
バックグラウンドチェックを適切に実施することで、採用プロセスにおけるリスクを軽減し、より良い人材の選定につなげることができます。信頼できる手順を守り、トラブルのない採用活動を目指しましょう。
候補者から同意を得る際の注意点
上述したように、法的トラブルを避けるため、バックグラウンドチェックを行う前には、候補者から明確な同意を得る必要があります。これは、個人情報保護法の遵守だけでなく、候補者との信頼関係を築くためにも重要です。
以下のポイントに留意しましょう。
目的を明確に伝える
チェックの目的を具体的に説明し、候補者が納得した上で同意する環境を整えます。例えば、「採用後のミスマッチを防ぐため」「業務適性を判断するため」といった具体例を示します。
同意書を文書化する
口頭だけではなく、同意内容を文書化し候補者に署名をもらうことで、後々のトラブルを回避できます。電子署名でも対応可能です。
調査範囲を限定する
必要以上に広範な調査は、候補者の不信感を招く恐れがあります。学歴・職歴・資格の確認など、業務に直接関係する項目に限定するのが適切です。
候補者からの同意取得は、法令遵守と信頼関係構築の要です。丁寧な説明と透明性のある手続きで、安心して進められる採用プロセスを実現しましょう。
まとめ
バックグラウンドチェックは、採用リスクを回避し、信頼できる人材を確保するために欠かせないプロセスです。
調査期間は内容や手法によって異なり、自社実施では数日から最大1ヶ月、調査会社に依頼する場合は一般的に数日から1週間程度が目安です。
調査を行う際には、候補者からの同意取得・法令遵守・調査範囲の限定など、透明性と適法性を確保することが重要です。採用プロセス全体の信頼性が向上し、ミスマッチやトラブルを未然に防ぐことができます。
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